独占業務も有する、不動産取引の専門家資格である宅地建物取引士(宅建士)は、不動産取引業務に直結する資格であるため、実務未経験者に比べて、実務経験者の方が合格しやすいと一般的に考えられています。
実際に、実務経験者は、学習においてどういう点が優位であるのか、そして、陥りやすい不合格の罠としてどんなものがあるのかまとめました。
まずは、実務未経験者に比べて、学習を進める上で役に立つ(効率的に進められる、あるいは、すでに知っているので飛ばせる)と言える点については、以下の通りです。
専門用語の知識
不動産でしか耳にしない様々な用語を知っているだけで、文章を読むことが大分楽になります。
基本的な不動産取引に関する知識
実際の不動産取引に関する知識やスキルを実務を通して身につけていることでしょう。おそらく学習教材の一部は読み飛ばせるはずです。
法令や契約書の実務経験
法律の表現は、一般人には特殊で難解です。また、法令文は無機質であり、他の法令とごっちゃになったり、学習中に記憶が混乱する事もよくあります。
普段から、法令や契約書の取り決めを目にし、扱うため、これらに慣れ親しんでいる実務経験者は、法的な知識や契約スキルに自信を持って臨むことができるでしょう。
プロセス理解
試験には、様々な条件と状況が与えられたシミュレーションのような試験問題も出題されます。不動産の売買や賃貸などのプロセスを理解していることで、このような問題には優位といえるでしょう。
実務経験者は、実務未経験者に比べて、大きく優位に立っていると言うことができると思います。
しかし、宅地建物取引士の合格率は平均15~18%と狭き門です。その実務経験者でも、多くは不合格となっているのは何故なのでしょうか?
実務経験者ほど陥りやすい罠、こんなようなことがあります。
実務経験に偏りすぎる
実務経験者は、仕事での経験に頼りすぎて、試験範囲外の知識や最新の法令改正などを十分に勉強しないことがあります。
試験は広範かつ最新のな知識を問うものであるため、バランスよく勉強することが重要です。
法令の正確な理解が不足している
実際の取引業務では法令の適用を経験的に知っているかもしれませんが、それが正確な法令の理解に繋がっているかどうかは別の問題です。
試験では正確な法令の知識が求められますので、これに注意が必要です。
業界慣習に固執してしまっている
不動産業界には地域ごとに様々な慣習が存在しますが、これに固執しすぎて法的な視点や試験範囲外の知識を無視してしまう(あるいは知らない)ことがあります。
また、会社ごとに”オレ流”のやり方があって、それが微妙に法令と異なるということもあるでしょう。
試験においては、完全なる法令順守が正答として問われるので、この点はしっかりと見直しておくべきでしょう。
模擬試験の不足
実務経験者は自分の経験に自信を持ちがちですが、試験の形式や出題傾向に慣れていない場合があります。
経験で身体で覚えていることが、必ずしも文字で正しく想起されるとは限りません。模擬試験を活用して試験の雰囲気に慣れ、不足している知識やスキルを補完しましょう。
時間配分の誤り
実務経験者は、実務での経験からくる自信からか、試験時間内に全問に解答するための時間配分を掴めておらず、難問一つについ固執してしまい、時間が足りなくなるということもあります。
効果的な時間管理を心がけましょう。
周囲の環境
先輩が『宅建士試験は楽勝だった。』みたいなノリの場合、『お前も勉強なんて適当でも普通に合格できる』と思っていて、しっかりと勉強時間を確保する気遣いや業務配分などをしてくれないケースがあります。
酷い場合は、試験前日に先輩が深夜まで飲みに連れ回す、そもそも先輩が試験日を覚えておらずに仕事を入れてくるということも実際起こります。
最後はなかなかどうにもならないと思いますが、こうした落とし穴にはまってしまわないよう、気を引き締めて勉強に望んでください。