簿記資格の種類と特徴
簿記資格と呼ばれるものは、主催団体の違いにより、大きく分けて3つあります。
通称 | 日商簿記 | 全商簿記 | 全経簿記 |
正式名称 | 日商簿記検定試験 | 簿記実務検定試験 | 全経簿記能力検定 |
主催団体 | 日本商工会議所 | 全国商業高等学校協会 | 全国経理教育協会 |
級・科目区分 | 「1級」「2級」「3級」「簿記初級」「原価計算初級」 | 「1級(会計)」「1級(原価計算)」「2級」「3級」 | 「上級」「1級(商業簿記・会計学)」「1級(原価計算・工業簿記)」「2級(商業簿記)」「2級(工業簿記)」「3級」「基礎簿記会計」 |
日商簿記
日本商工会議所が主催する日商簿記検定試験は、年間50万人以上が受験する、日本最大級の資格試験です。
日商簿記には1級・2級・3級・簿記初級(旧4級)・原価計算初級の5つの級があります。
3つの簿記資格のうち、最もメジャーで、企業からのニーズも高い資格です。
就職に活かすなら、日商簿記資格取得を優先しましょう。
まずは、商業簿記の基本を扱う3級の取得から。そのうえで、経理現場の実務レベルとしては、2級相当の知識が求められますので、2級まで取得することを目指すのがよいでしょう。
尚、最終的に1級に合格すれば、税理士の受験資格も獲得できます。
全商簿記
全国商業高等学校協会が主催しているため、主に商業高校に通う高校生が受験しています。全商簿記には1級・2級・3級の3種類があり、1級は科目として、『会計』と『原価計算』に分かれています。
1級会計だけ合格した場合も、科目合格として「全商簿記1級会計合格」を名乗れます。会計・原価計算の双方を合格した場合は、「全商簿記1級合格」を名乗ることができます。
全商簿記を取得するメリットですが、直接的には、推薦入試合格の条件として設定している大学・短大もあることなどから、将来的に経理のスペシャリストを目指す高校生なら、1級を目指したい資格です。尚、商業高校の学生でないと受験できないというわけではありません。
日商簿記と比べると1級程度難度が低い(全商簿記の1級が、日商簿記の2級相当)と言われています。
全経簿記
全国経理教育協会が主催する簿記資格で、主に経理・会計の専門学校に通う学生が受験している検定です。難易度は全商簿記より高く、日商簿記よりやや低いといわれています。
「上級」「1級」「2級」「3級」「基礎簿記会計」とあり、1級は『商業簿記・会計学』と『原価計算・工業簿記』の科目に分かれており、2級は『商業簿記』と『工業簿記』に分かれています。
科目合格で科目資格取得を名乗れますが、基本的には1級2級ともに、双方の科目合格を目指すのが一般的です。
日商簿記や全商簿記と比べると、直接的なメリットがなさそうに思われる資格ですが、特定の方には大きなメリットがある資格です。
それは何かというと、全経簿記上級合格は、日商簿記1級合格と同じで、税理士の受験資格を獲得できるという点です。さらに、全経簿記は、各級の受験資格はありませんので、いきなり上級を無条件で受験できます。
税理士を目指している方の最短ルートとして、全経簿記を選択する方が一定以上存在しています。
簿記資格を取得するメリット
簿記は、企業活動における取引のすべてを金銭として管理し、最終的な損益を計算し、利益を出すための課題を浮き彫りにするものですので、経理部門従事者以外の、全てのビジネスパーソンにおいて大なり小なり必要となる技能です。
就職に必要
企業活動の根幹を成す、金銭の流れを理解していることは、直接的に就職活動において強みになります。簿記資格は、一般的知名度も抜群で、ある程度しっかりした学習を修めなければ合格できない資格ですので、簿記資格を持っているということは、学習意欲が高いことのアピールにもなります。
出世に必要
就職後もマネジメント層に上がっていくにつれ、売上や利益に対しての責任が大きくなりますから、簿記の知識を有していることで、部署の課題を理解して対応できるなどの実務的なメリットを享受できます。
もし、取締役ともなれば、会計に理解がないと、経営会議など全社を考えなければならない場において、話になりません。
副業・独立開業に必要
当たり前ですが、自分が事業主ともなれば、会社の資金繰り、財務は生き死にに直接関係します。
『国に提出しなければならないものは、会計士に丸投げ』で企業経営できるほど甘くはありません。スペシャリストである必要はありませんが、部下の経理スタッフや会計顧問が提出してくる資料を読んで理解でき、説明を聞いて正しい判断が下せるよう、最低限の簿記知識は修めておくべきでしょう。
まとめ
- 簿記資格には、「日商簿記」「全商簿記」「全経簿記」の3つがある。
- 一般企業の経理部門への就職ならば「日商簿記2級」が目標。
- 大学の商業学科への推薦入試を受けるならば「全商簿記1級」が目標。
- 税理士を目指すならば「全経簿記上級」か「日商簿記1級」が目標。
- 全てのビジネスパーソンにおいて、簿記資格は実務スキルとしても有益。
簿記は、資格取得が目的というより、その技能を身に付けることこそが重要ですので、資格のための勉強というよりも、社会人として、自分自身の成長のための勉強にうってつけと言えます。