まず、簿記試験で使用可能な計算器具は、電卓とそろばんとあり、以下のルールがあります。
計算器具(そろばん、電卓。どちらかを1つ)を使用しても構いません。ただし、電卓は、計算機能(四則演算)のみのものに限り、例えば、以下の機能があるものは持ち込みできません。
- 印刷(出力)機能
- メロディー(音の出る)機能
- プログラム機能(例:関数電卓等の多機能な電卓、売価計算・原価計算等の公式の記憶機能がある電卓)
- 辞書機能(文字入力を含む)
(注)ただし、次のような機能は、プログラム機能に該当しないものとして、 試験会場での使用を可とします。日数計算、時間計算、換算、税計算、検算 (音の出ないものに限る)
(引用:商工会議所の検定試験 試験科目・注意事項 https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/class2/exam より)
プログラム機能が不可ですので、多少経理実務用と試験用ではベストとなる電卓が異なるかもしれません。とはいえ、簿記試験用のベストな電卓は、実務上も十分に使い勝手の良い電卓であることは確かでしょう。
経理の専門家ほど、最初に手にした数千円の電卓を五年、十年と愛用している方は多いようですから。
ちなみに、見た目に制限はありませんので、キャラクターグッズの電卓などファンシーなものでも構いません。(お勧めはしませんが。)私の知人の簿記2級保持者は、某サンリオキャラクターの電卓使ってるくらいですし。
さて、簿記試験におすすめの電卓ですが、まずは当然ながら自分の手になじむ大きさと角度、液晶の見やすい角度というのは優先的に考えるべきです。
そのうえで、いくつかの重要なチェックポイントがあります。
利き手
左利きだけど、使う電卓は利き手で違うのか?という不安をお持ちの方がいるかもしれません。
もちろんですが、電卓は利き手と逆の手で使います。(右利きならば、右手には筆記用具が握られてますからね。)しかし、電卓に右利き用、左利き用というのは一般的にありません。皆さん、左手で電卓を扱うのが一般的です。もっと言えば、経理現場では、疲れてくると右手で電卓扱うとか、都度切り替えて使う方もいらっしゃいますので、そういうものだと思って、慣れるようにしましょう。
桁数
表示桁数が少ないと、大きな数の加算や乗算で、エラーになって計算ができないという憂き目に遭います。
簿記試験で使う電卓には、桁数のルールはありません。実務的な視点でも12桁以上の計算ができる電卓を選ぶのがベストです。
大きくて打ち込みやすい
キー間がとれていて、キー自体が大きく、高さ(キーストローク)があるものがお勧めです。特に、キーストロークが深く取れると、慣れている方であれば、キーを押した瞬間に間違ったと気づいた際に、打ち込む前に指を戻して回避するということもできるからです。
キータッチが軽い方が、打ち込み速度が速いのは確かですが、総合的な業務処理スピードの早さが本質的に重要です。打ち間違えて全部最初からというリスクを鑑みたら、ある程度はキータッチが重いほうが良いのではないでしょうか。
試験で使ってよい機能群
電卓には、入力省力化機能が色々とあり、簿記試験でも使用可能な機能は多々あります。簿記試験は結構時間との闘いですので、こうした機能を使いこなすことは重要です。
その中でも、電卓を選ぶ際に、使いやすさを検討した方が良い機能をいくつかご紹介します。
桁下げ
百万円っと。10,000,000。あ。ひとつゼロ多い!というのは、定番のミスです。桁を下げられる機能です。
サインチェンジ
「+」と「-」を入れ替える機能です。それだけ?と思われるかもしれませんが、簿記試験で確実に無いと困ります。
損益計算書の利益計算、減価償却の定率法、リース会計などで必ずお世話になります。
メモリー機能
CR、RM、M+、M-などの記号であらわされる、入力した内容を保持して呼び出せる、定番中の定番です。2級の工業簿記分野でメモリー機能を使わずに計算していくのは時間の無駄です。
グランドトータル機能
イコール(=)キーを押し得た答えを自動的に合計する機能です。製造原価や単価の異なる商品の仕入額を計算していくのに必ず使う機能です。
100円×172個+120円×256個・・・のような乗算結果の足しこみを四則演算通り数珠繋ぎにやるのはあり得ませんし、いちいち、小計を書き出していくのもナンセンスです。
100円×172個=17,200円、120円×256個=30,720円と、ひとつづつ単価×数量の計算を行って、グランドトータル一発で全部足しこんでくれる機能です。
定数計算機能
定数計算とは、同じ数字を計算に繰り返し使う際の機能で、これがまた、ものすごく便利な機能です。2級の工業簿記の原価計算分野で多用します。
労務費などの同単価の乗数を扱う機能で、自動的に「A×」の部分が記憶されます。具体的には、労務時間単価2,000円で、製品aの製造に15時間、製品bの製造に22時間を要した場合の製造原価を求めるという際に、「労務時間単価2000円」を定数計算部分として記録し、「15=」「22=」と入力するだけ(入力方法は電卓によって異なりますが)で、製品a製品bの合計労務単価を計算できるというものです。
早打ち
打鍵(キーを打ち込む)速度は、日に日に早くなっていくものです。いくつもの電卓のキー受けを擦切らせて壊し、修練に修練を重ね、指が見えないほどの速さで電卓を扱うほどのマスタークラス(そんなものはありません)ともなると、打ち込みの速さに電卓が反応しきれないということは往々にしてあります。(いやそこまで熟練しなくても、これは感じます。)
そうした達人に欠かせないのが、早打ち機能です。これは、完全にキーアップするタイミングで次のキーを打っても入力されるという機能で、体感的にも実質的にも打鍵タイムロスを限りなくゼロに近づける効果があり、入力できていなかったことで計算ミスにつながるということを防止できる機能です。
後、地味に入力リズムが崩されにくいという心地よさが、重要な効能です。
以上のような点を、電卓選びの参考にしてみてはいかがでしょうか。
色々書きましたが、電卓のメジャーメーカーである、カシオ、シャープ、キャノンのものであれば、概ね満たしていますし、その中で、自分の手になじむものを手に取れば、まず間違いありません。