日本の事業者数は約370万社、内法人は約180万社であり、事業者の約99.7%を占めているのは中小零細企業です。ここがターゲットとなる、国が唯一認めたコンサルタントが、中小企業診断士です。
中小企業診断士は、中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う専門家です。国家資格として、中小企業支援法第11条に基づき、経済産業大臣が登録します。
「中小企業診断士」に関する概要
資格・スキルとしての分類 | 国家資格 |
活用分野 | 経営 |
用途 | 副業 独立開業 |
標準学習時間 | 800~1000時間 |
需要度 | |
習得しやすさ | |
習得・活用のための費用の低さ | |
在宅との相性 | |
資格・スキル単体での収益化 | |
他の資格・スキルへの展開 |
中小企業診断士になるには?
マークシート形式の1次試験と、2次試験は筆記式と口述式という試験構成で、これらを全て突破すれば中小企業診断士です。
1次試験では、全7科目に合格することで突破となりますが、全科目全てに同時合格する必要はありません。3年間ですべての科目に合格すれば、1次試験合格となります。つまり、最初に受かった科目は、次の試験では免除となるわけで、3年以内に全て受かれば1次試験通過です。
尚、7科目とは、経済学・経済政策、財務・会計、企業経営理論、運営管理、経営法務、経営情報システム、中小企業経営・政策です。
1次試験突破後、2年以内に2次試験に合格すると、晴れて中小企業診断士として登録できます。
中小企業診断士って何する人?
『中小零細企業に、コンサルタントなんて雇う余裕ないでしょ。』
『コンサルタントなんて、偉そうに口を出すだけ出して、失敗しても経営の責任を問われるわけでもないのに、信用できるか。』
中小零細企業の社長に、コンサルタントは必要か?という質問をすると、否定的な意見として返ってくる中では、上記の様なものが代表的です。正直、たたき上げの実務兼業社長ほど、こうした意見を持つ傾向があります。
まぁ、それぐらい自分に自信が無いと、社長なんてやってられませんよね。
何故、こんな意見も多いのかというと、既存の中小企業診断士がどんなものかを知らない社長が圧倒的に多いのかも知れません。実際、法人180万社に対して、中小企業診断士は、わずか2万人。しかも、中小企業診断士の業務範囲を考えると、一人の有資格者が顔を見せる企業なんて、両手の指で一杯一杯だと思います。
では、実際、中小企業診断士とは、何をする、何ができる資格なのでしょうか。よりリアルに挙げさせていただきますと、業務の一つに「経営改善計画書・経営診断書の作成」があります。
これは、言い方を選ばなければ、お金を引っ張ってくる上でもの凄く重要な書類なのです。
助成金・補助金申請、金融機関融資などであるとないとでは話が異なって参りますし、そもそも中小企業診断士は、書類を書くだけではなく、その経営内容の客観的な特性を調査し、適切なパートナーはどこなのか、最適な手段は何なのかも選択できるのが常です。
そして、経営診断書は、国や自治体が絡む許認可でも必要書類に挙げられているものが多く、こうした書類の作成を専門としている資格保有者が、中小企業診断士です。
ヒトモノカネの内、中小企業の金に関する強力なパートナーが中小企業診断士です。(いや、もちろん組織再編計画など、ヒトもモノでも強力なパートナーではありますけれども。)
ただし、「経営改善計画書・経営診断書の作成」は中小企業診断士の独占業務ではなく、一応社長自身が自力で作ることや、お願いすれば法律家などにも作成してもらえますし、何でしたら、社長の奥さんが作っても違法ではありません。
独占業務を持たないが故に、中小企業運営上、絶対に関わる士業でないために、いまいちピンときていない中小企業の社長が多いというのが実状かと思われます。
コロナによって、知名度が上がった中小企業診断士
通常、中小企業診断士は、国や自治体が絡む許認可が、事業運営上絶対に必要となる業種においては知名度が当然高かったのですが、それ以外の業種では『よくわからない人』であるという気配はありました。
しかし、その知名度が上がったのが、このコロナ禍です。コロナ禍で、経済活動が一斉に停滞し、中小零細企業の経営環境は激流の中に放り込まれました。当然、これに対して国、地方自治体、関連外郭団体などは、事業再構築補助金など、大型のコロナ関連助成金・補助金を設立したわけです。
これまで、助成金や補助金の類いにほとんど目を向けていなかった企業も、これによって中小企業診断士と接点を持つことが出てきたわけです。
もちろん、コロナに絡み、非接触化の推進、DXを旗印としたIT化も多くの助成金を生み出し、中小企業診断士の活躍の場を広げました。
中小企業診断士に求められる事
冒頭に挙げた、「経営改善計画書・経営診断書の作成」はもちろんありますし、経営に関する助言も、社長との信頼関係が構築されれば当然に業務として発生し、顧問契約を結ぶ事になるでしょう。
この基本的な中小企業診断士としての業務に付随して、中小企業診断士には人脈と、状況に合ったパートナーを推薦できることが、社長の信頼を得る上で重要になってきます。
そのため、『IT化に関して事業課題をまとめ、適切なソリューションパートナーの条件を挙げられること』『○○という事業に際して、融資審査が通る可能性が高く、顧客紹介も期待できる金融機関を選定すること』などの、専門特化した知見があることが、中小企業診断士にとって価値ある強みとなるでしょう。
つまり、前職に企業向けサービスを展開する企業で、ある程度の地位で勤めていたことなどが、中小企業診断士資格を活かす上では大きな武器になります。
退職して、折角の人脈が薄れていってしまうのがもったいないとお考えであれば、中小企業診断士は、セカンドキャリアとして最適な目標になるものと考えます。